【祇園祭2024】「後祭・山鉾町宵山そぞろ歩き」を終えて

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7/17神幸祭で、八坂神社から四条寺町の御旅所に移られた素戔嗚尊はじめ3座の御祭神が、本社へ神輿で戻られる7/24の還幸祭。その前に氏子地域の邪気や穢れを払い清浄にするのが同日午前の後祭山鉾巡行で、7/21~23が後祭の宵山期間です。

後祭は、京都市の観光政策もあり、1966(昭和41)年から事実上廃止され、前祭に統合されていました。
しかし、これでは山鉾巡行の真の意味合い──神輿渡御に先駆けて行われる、町衆が担う大切な神事であること──を損ね、神事としての継承が歪んでしまわないか。そうした氏子や町衆からの批判は根強く、大船鉾が復興した2014(平成26)年に後祭が分離開催に戻り、つまり復活して以来、今年で10年目の節目を迎えたわけです。

23基の山鉾が参加する前祭に比べ、一昨年約200年ぶりに巡行復帰した鷹山を含め、計11基とこじんまりしていますが、露店も出ず、歩行者の通行制限もないので、比較的ゆっくりと回ることができるのが後祭の魅力です。

そんな後祭の宵山期間に、宵々山の7/22夕刻、宵山の7/23午前の両日、「山鉾町宵山そぞろ歩き」としてまち歩きイベントを行いました。

開催を夕刻と午前に分けたのには思惑がありました。
夕刻は駒形提灯が灯り祇園囃子が流れる中、宵闇に映える山鉾の風情をたっぷりと。
午前は、人出もまだ少ない中で、各山の会所飾り見学に重点を置き、御神体や懸装品を間近でじっくりと堪能する狙いです。

7/22夕刻は、集合時間直前に京都市周辺でゲリラ雷雨が頻発、空も真っ暗で心配しましたが、結局最後まで一滴も降らず、静かな宵々山の夜をゆっくりとそぞろ歩くことができました。
7/23午前は、前祭もあわせた全34基の中でも、特に人気を集める造形の橋弁慶山や浄妙山をはじめ、黒主山や鯉山などの御神体や懸装品をじっくりと見学。
また、人が上がって見学できる鉾と曳山は後祭に計4基ありますが、夜はお囃子もあり、そもそも混雑で長い行列となりがちです。しかし、そこは午前中のいいところ。ちょうど列が空いていた鷹山、南観音山に参加者の有志の方々が上られ、その高さや内部の造作など、大いに楽しんでいただきました。
私もご一緒して南観音山へ。小学生の時以来、約50年ぶり!
会所に安置された御神体・楊柳観音像に感動し、また久々に上った山では、その高さに足がすくむほどでした。

さて、近年復興した大船鉾や鷹山は、まだ漆塗りや飾金具など復興途上であり、1864(元治1)年「禁門の変」の大火で被災が激しかった山鉾の復興がいかに困難か、そして、当該の町内会やその支援者が大変な苦労と努力を重ねてこられて現在がある──ここに重点を置いてご案内しました。

これは、祇園祭のみならず、維持継承が難しくなっている様々な有形・無形文化財や民俗文化財などにも通じる話です。おひとりでも多く、文化財を取り巻くそうした実態に接してもらい、文化財保護への関心を高めたいという私の強い思いの現れでもあります。

今年の祇園祭では前祭・後祭あわせ、のべ4日間ご案内しましたが、解説資料等を作成する過程で、私自身、新たな発見、学びも数多くありました。
今年の課題や改善点を踏まえて、少しでもご満足のレベルを上げていくよう、精進したいと思います。

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