2025年8月16日、「京都御苑ナイトウォークと大文字送り火鑑賞」を開催しました。
当日はあいにくのお天気で、午後から本降りの雨。送り火はどんな荒天でも実施されるということで、傘や雨合羽を手に、たくさんの参加者の方々が集合場所である京都御苑・堺町御門に集まってくださいました。
「大文字」点灯の20時まで、薄暮の京都御苑内旧跡も楽しんでいただこうという趣向です。集合した堺町御門は「禁門の変」(1864年)の激戦の地でもあり、ここを皮切りに五摂家のひとつ九条邸跡・厳島神社(京都三珍鳥居のひとつ「唐破風鳥居」)→花山院邸跡・宗像神社→閑院宮邸跡→西園寺邸跡・白雲神社など雨の中を巡りました。少し時間もあったので、本来は予定になかった蛤御門にも立ち寄り、門に残る数多くの弾痕には、多くの方が驚かれていました。
20時前に京都御所の南側に到着。ここから大文字を眺めます。実は、参加者のほとんどが「送り火を生で見るのは初めて」という方でした。テレビや写真で見たことはあっても、実際に自分の目で体験するのはまったく別物です。雨脚が強まるたびに「ちゃんと火がつくのかな」「文字がぼやけてしまうのでは」と心配の声も。私も正直なところ、晴天の年よりは弱く見えるやろなと覚悟していました。
ところが点火の瞬間、そんな不安は一気に吹き飛びました。東山の山肌に浮かび上がった「大」の文字は、雨をものともせず力強く、くっきりと輝いていたのです。晴れた夜と比べても遜色のない堂々とした姿に、思わず歓声が上がりました。しとしとと降り続ける雨のなか、燃え盛る炎が夜空を照らす光景は、むしろいっそう厳かで、印象深いものとなりました。
京都御苑からの眺めがまた格別でした。広々とした苑内は視界を遮るものがなく、また、マンションなどの建物もうまい具合に木立に隠れて見えません。幽玄に灯る「大」のみを、厳かに、落ち着いて鑑賞できます。人混みに押されることもなく、ゆったりと送り火を仰ぐ時間は、ほかの観覧地ではなかなか味わえません。
そして何より、この地が持つ歴史の重みを感じられるのが魅力です。現在「京都御苑」として国民公園となっていますが、長らく歴代天皇や公家の邸宅が集まっていた場所。つまり、私たちがこの夜に見上げたのと同じアングルで、昔の人々も「大」を眺めてきたわけです。そんな時間のつながりを思うと、送り火の炎がいっそう特別に見えてきます。
「送り火は一度見てみたいと思っていたけれど、まさかこんなにゆったり楽しめるとは」という感想を多くの方からいただきました。初めての方にとって、今回の送り火が素敵な夏の一コマとして、思い出に刻んでもらえたら嬉しいです。
今年は雨中での開催となりましたが、その分、送り火の力強さや京都御苑の魅力をあらためて実感できました。京都ならではの歴史や文化に触れるひとときとして、来年以降も、同じように多くの方とこの感動を分かち合えたらと思います。
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