5月末、一泊で開催されたNPO法人・古材文化の会の全国集会に参加しました。
初参加となった今回は、愛媛県松山市の三津地区に残る伝統建築群の視察。
京都市文化財マネージャーの私の同期でもある池田由美さんが、ご主人の仕事で一時松山に居住された頃にたまたま訪ねられ、地区の魅力に一目惚れ。一介の主婦という立場ながら、すっかり寂れかけていた地区の保存再生に孤軍奮闘され、徐々に活動の輪が広がり、今では古民家を利活用したカフェや様々なショップが集まる隠れた観光スポットにもなっています。
松山市北部の入江にある三津地区は、江戸時代は瀬戸内海に出る海運の要衝。松山藩を支えた豪商が贅を尽くした江戸期の商家から、大正・昭和レトロな建築まで、バランスよく古い建物が残っており、懐かしさを覚えるような静かな街並みでした。
池田さんの尽力で、多くの所有者にお話を伺いましたが、印象に残ったのは、先祖の大切な財産をそのまま残したい、自分の代で滅失させたくないという矜持でした。また、若い方で外部から三津に来てその景観を残そうと奮闘される方々も。所有者や地元民のみならず、関心と支援が外部に広がるのは素晴らしいことで、頼もしく感じました。
一方で、やはり皆さん保存継承への経済的負担が非常に厳しいとのこと。商業面での支援や保存継承への補助の仕組みはもちろん、相続税や固定資産税など税制面での支援なども喫緊の課題です。三津地区だけではなく、日本各地で同じような状況になっているはずで、答えは一朝一夕に出るものではありませんが、所有者の肉声と熱い思いを直接伺うことができ、大変勉強になった旅でした。