【五山送り火「大文字」鑑賞】京都御苑旧跡ナイトウォークを終えて

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お盆で迎えた祖霊を浄土へとお見送り。
8/16夜の伝統行事・京都五山の送り火。
夜8時の「大文字」を皮切りに、「妙・法」「船形」「左大文字」「鳥居形」の五つが、京都の街を取り囲むように順次灯されていきます。

今回は、五山送り火を代表する「大文字」(如意ヶ嶽)を、夕刻の京都御苑旧跡巡りとあわせて楽しんでいただこうという企画です。

南北1.3km、東西0.7kmの広大な京都御苑。
南北朝〜明治まで500年以上にわたり天皇の住居だった禁裏(京都御所)を中心に、140を超える宮家や公家の邸宅が立ち並んでいましたが、1869(明治2)年、明治天皇の東幸でほとんどの公家が東京へ移住、屋敷街は荒れるに任せ、荒廃が加速。
1877(明治10)年、荒れ果てた故郷を嘆いた明治天皇の命による「大内保存事業」により屋敷の撤去や外周石垣土塁工事、樹木植栽などが施され、今日の姿のベースとなりました。
大部分が国民公園として生まれ変わった現在、ごく僅かに残る幕末以前の旧観を、堺町御門→九条邸跡・厳島神社(京都三珍鳥居のひとつ「唐破風鳥居」)→花山院邸跡・宗像神社→閑院宮邸跡→西園寺邸跡・白雲神社と巡りました。

そのあとはいよいよ大文字鑑賞。
京都御所の南側にある建礼門前に陣取り、点灯を待ちます。
続々と暗闇に集まる人たち。インバウンドと思しき多くの方々も。
参加者の皆さんも、半数以上が実際の送り火を見るのは初めてとのことで、期待感と緊張が伝わってきました。

午後8時、予定通り点灯開始。
計75基の火床で構成される「大」の字は、1画目80㍍、2画目160㍍、最後の払いとなる3画目が120㍍の大きさです。
少し風がある晴天で絶好のコンディション。
カメラやスマホで撮影する人、静かに手を合わせ祈る人──それぞれのスタイルで送り火を迎えます。
私の記憶では、ここ10年では最も鮮やかに、そして幻想的に浮かび上がった「大」でした。

京都御苑を鑑賞場所に選んだのは、広々としているため多少人が多くても混雑を感じないことに加え、歴代天皇や公家が眺めていたのと近いアングルで大文字を楽しんでもらいたいという狙いでした。

最後の灯が消える8時半近くまで鑑賞。
「思っていたより字が大きかった」「実際に見て感動した」といったご感想も聞くことができ、少し安堵しました。

1983(昭和58)年に、それぞれが京都市無形民俗文化財に登録された五山送り火。
5つの灯の下には、その歴史と伝統を背負い、維持継承に奮闘されている各保存会の皆さんの存在がある。
ぜひそのことに思いを馳せてほしいと皆さんにお願いをし、堺町御門でお別れしました。


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