京都市の中心を東西に走る松原通。
平安京の五条大路にあたり、鴨川・松原橋を東へ渡り、京都五花街のひとつ宮川町を越え東山方面へ向かうと「六道の辻」を経て、世界遺産・清水寺へと通じる参詣道・清水道へつながります。
このあたりは、平安京風葬の地・鳥辺野の北辺あたりと考えられ、六波羅蜜寺の北にある「六道の辻」交差点は、この世(現世)とあの世(冥土)の境界線とも呼ばれます。「幽霊子育飴」のお店があることでも有名ですね。
ここから少し東にあるのが、建仁寺の境外塔頭・六道珍皇寺。
延暦年間(782-805)創建と伝わり、冥界で閻魔大王に仕えた伝説を持つ小野篁ゆかりの古刹です。
夜間は少し怖いくらい静寂な周辺が、厳かな熱気に包まれるのが8/7~10にかけての「六道まいり」。
古来より盂蘭盆会に行われる、祖先の霊=「精霊」迎えの行事で、「お精霊(しょらい)さん」とも呼びます。
初日となる8/7夜、今年もお詣りに向かいました。
松原通には「六道まいり」の横断幕が張られ、同寺門前から続く高野槙の売店群からは、清浄で爽やかな槙の香りが。高野槙を目にするのも年間通じてこの時ぐらいのように思いますが、祖霊が、この槙の葉に乗って冥土から帰ってくると信じられています。
さて、「六道まいり」には決まった作法といいますか、お詣りの手順があります(より詳細は写真ご参照)。
①まずは高野槇を買う
②本堂前で水塔婆(みずとうば)に先祖の戒名を記入してもらう
③迎え鐘を撞く
④本堂前で本尊・薬師如来に先祖が無事に家に戻れるよう祈る
⑤水塔婆を線香で浄める
⑥「賽の河原」と称される地蔵堂前で、水塔婆を水向け用桶に入れ、予め用意された高野槇の穂先で水塔婆を湿らせる水回向(みずえこう)をして納める
境内にはたくさんの人が訪れ、観光ツアーのような団体もいらっしゃいますが、純粋な信仰に基づく伝統行事という、非常に厳かな雰囲気を色濃く残します。
境内右手に鎮座する閻魔さんの睨みで、物見遊山気分は吹き飛び、「ちゃんとお詣りせんと」と背筋が伸びるように感じるのは私だけでしょうか。
4日間のこの行事が終わると、短いひと夏を祖霊とともに家で過ごし、8/16五山送り火で再び冥土へとお見送り。
そして地蔵盆のお祀りが済めば、いよいよ秋の訪れ。
そんなライフサイクルで長年過ごしてきた京都の人は、私も含めて結構いるのではと思います。
幼きころ、私の手を引いて「六道まいり」に連れてきてくれた祖父母は、遠い記憶の彼方へ。
私の子や孫にとっては、写真でしか見たことのない「ご先祖さま」になってしまいましたが、今日は家で少しでもその気配や温もりを感じられたらエエな──そう思いながら帰路につきました。
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